私が音楽室に戻ったすぐあとに、葵が音楽室に入って来た。


「まあね」


「目、真っ赤にしてたよ。かわいそ~」


「やらない方が悪いんじゃん」


「でもさ、みんな優音みたいに完璧じゃないし」


「完璧・・・ね」


「優音?」


クラの片づけの手を止めた私を、葵は不思議そうに見た。


「何でもない」


「でもやっぱさ、泣かすのはよくないよ」


「そうだね」


うなずいた私に、葵は満足そうに笑った。


私は別に、完璧人間じゃない。


他人が思ってるより、私はいい子じゃないよ。


その日も私は、放課後の音楽室でピアノを弾くことにした。