音を奏でて~放課後の音楽室~

最初に軽いドアを開けて、次に防音になってるドアを開ける。


その瞬間、一気に鍵盤を押した音が響いた。


鍵盤を10本の指で押さえたまま動かない先生に、どう声をかけていいか分からなくて、重いドアを開けたままその場に立ち尽くす。


「先生?」


それでも勇気を出して呼びかける。


「ああ。どうした?」


私の方を向いて、弱々しく微笑む先生。


「うん。もうすぐご飯出来るから、呼びにきたの。先生、大丈夫?」


靴を脱いで部屋に上がり、先生の傍に寄る。


「ごめん。少しイライラしてる」


「うん」


グッと拳を握った先生は、その拳でピアノを叩いた。


二人しかいない部屋に、不協和音が響く。


何度も何度も響く。


「クソっ」