音を奏でて~放課後の音楽室~

「分かった」


それだけ言うと、内田先生はキッチンを出て行った。


そんな先生を目だけで追っていく。


「気になる?」


「えっ?うん。ちょっとだけ」


そう答えると、みちる先生はクスッと笑った。


「ピアノを弾き始めたのはいいけど、あの子も苦しいのよね。あまりに昔弾いてた自分とは違って」


「やっぱり、昔と今の先生のピアノは違うの?」


「そうね」


みちる先生がお鍋を混ぜていた手を止める。


「あの子がまた弾くようになって少し見てきたけど、やっぱり繊細な指の動きは出来なくなったかな。て言っても、あの子が昔弾いた曲と、今弾いた曲を比べても、素人には分からないほどの微々たるものだけど」


「そうなんだ」


またみちる先生が鍋を混ぜ始める。


「仁は耳がいいから、きっとすごく気になるんだと思う。優音ちゃんも耳がいいから、聞いたら分かるかもしれないけど」


そう言ってみちる先生は、混ぜてたハヤシライスのルーを味見した。