音を奏でて~放課後の音楽室~

「うん」


先生が私の髪に頬を寄せる。


「落ち着く」


「ん?」


「優音抱きしめると、すごく落ち着く」


「私も。抱きしめられるの、すごく落ち着くよ」


人の体温って、こんなにも落ち着くものなんだね。


先生に抱きしめられて、初めて知ったよ。


「もう少し、こうして」


「うん」


無言で私を抱きしめていた先生は、しばらくしてまたピアノに向かった。


「苦しいね、先生」


先生に聞こえないように、小さく呟く。


途切れ途切れに聞こえてくる先生の音。


その日私は、その音が完全に止まるまで、耳を澄ませていた。