弾き終わってまた、先生の膝の上に戻る。


「先生」


「ん?」


先生の腕が、私の腰に回る。


「この前、病院行って来たんでしょ?」


「ああ」


私が先生の家の前に座り込んでいたあの日、先生は病院に行ってた。


手の具合を診てもらうために。


「どうだったの?」


「やっぱり、もう元には戻らないって」


「そっか」


先生がため息をつく。


「もう、病院には行かないよ」


「うん」


「何年もバカみたいに期待してきたけど、そろそろ現実を受け入れないとな」