「でも、私好きだよ。先生の音」


綺麗で優しくて、温かい音。


それが、先生の音。


「先生は、ピアノ好き?」


「ああ。好きだよ」


「じゃあ、大丈夫」


好きって気持ちがあれば、またきっと納得いくピアノが弾けるようになる。


「今度は私が弾いてあげるね」


先生の膝から立ち上がって、ピアノに向かう。


「何がいい?」


「そうだな。バダジェフスカの乙女の祈り」


「うん」


タイトルの乙女は、一体何を祈っていたんだろう?


明るい未来が待っていますように。


私たちが祈るのは、ただそれだけ。