音を奏でて~放課後の音楽室~

どうして花音は、かわいそうな子なんだろう?


「私には分からないの。どうして花音がかわいそうなのか。だって、花音にはお母さんもお父さんもいるのに」


花音はかわいそうな子なんかじゃない。


私から見たら、何もかも恵まれてる子。


「お母さんに聞いたの。私のこと好きって、生んでよかった?って」


「うん」


「そしたら、お母さん答えてくれなかった」


結局は、花音だけいればいいんだ。


私なんか、どうでもいい。


「私、生まれて来なきゃよかった。いらない子だから」


「そんなことない」


先生の目が、切なげに揺れる。


「おじいちゃんとおばあちゃんのところに行きたいな。そしたら、何もかも楽になるのに」


「優音・・・」


話し疲れた私は、ゆっくりとまた目を閉じた。