「林さん、ピアノいいかしらね?」


おばあちゃんが、林さんに聞いた。


「どうぞどうぞ。優音ちゃんが弾くのよね?」


「はい。お借りします」


林さんは、ここの一番偉い人。


この施設を建てた人なんだよ。


ちょっとポッチャリしてて、笑顔が似合う女性。


「おばあちゃん、なに聴きたい?」


「そうだね。久しぶりに、ベートーベンが聴きたいね」


「うん」


ベートーベンの曲を、何曲か弾く。


「優音ちゃんは上手ね~」


いつの間にかピアノの周りには、お年寄りたちの姿が多くあった。


立ち上がって、ちょこんとお辞儀をする。


パラパラと拍手が起こった。