お母さんの目が、大きく見開かれる。


「ずっとずっと、寂しかったのに」


おじいちゃんやおばあちゃんじゃダメなの。


お母さんとお父さんじゃないと。


「お母さんは、私のこと好き?生んでよかった?」


真っ直ぐに見つめる私の視線から、お母さんが目をそらした。


そっか、答えてくれないんだ。


きっと、考えたこともないんだね。


私のこと好きか、なんて。


お母さんを避けるようにして、階段を下りる。


「お姉ちゃん・・・」


一番下まで下りると、花音がリビングから廊下に出ていた。


「ごめんね、花音。ピアノ弾いてあげれなくて」


それだけ言うと、玄関から外に出た。


傘もささずに、雨の中を歩く。