音を奏でて~放課後の音楽室~

その声に足を止めて、ゆっくりと振り返った。


「どうして弾いてくれないの、優音」


「ごめん。気分じゃないの」


「気分じゃないって・・・花音が望んでるのよ」


「花音が望んでたら、やらなきゃいけないの?」


お母さんを真っ直ぐ見つめる。


「花音はかわいそうな子なの。いつも病院で。お姉ちゃんなら、そのくらいのワガママ聞いてあげて」


かわいそうな花音。


いつも病院に閉じ込められて、学校に行けない、どこにも遊びに行けない。


でも、ほんとに花音はかわいそうな子なの?


だって、いつも隣には、お母さんもお父さんもいるじゃない。


ワガママいっぱい聞いてもらえるじゃない。


私には、誰もいなかった。


ワガママだって、聞いてもらったことない。


「ねえ、お母さん。私は、かわいそうじゃないの?」