音を奏でて~放課後の音楽室~

頭をなでられて、フーと長い息を吐く。


「花音ね、今家に帰って来てるの」


「うん」


「私ね、ピアノ大好き。でもほんとは、花音に弾いてあげたくない」


「うん」


ピアノは、私が唯一自分を出せる場所。


お父さんもお母さんもいる花音に、邪魔されたくない。


「嫌なお姉ちゃんでしょ」


「そんなことない」


先生が私を抱く腕に、力を込める。


「ねえ、先生」


「ん?」


「もう少ししたら、家まで送って行ってくれる?」


「ああ」


でも、逃げてたら何も変わらない。