あれ以来、泣いていない。


たぶん次に泣くときは、おばあちゃんが亡くなったときだと思う。


「優音ちゃん。ピアノ、弾いてくれる?」


「いいの?」


「おばあちゃん、優音ちゃんのピアノ大好き」


「うん!」


私がピアノを始めたのは、おばあちゃんの影響。


クラシック音楽が大好きなおばあちゃん。


よく、おじいちゃんとおばあちゃんの部屋からは、クラシックが流れていた。


「優音ちゃん、ピアノ弾いてみる?」


ある日そう言われて、楽器屋に連れて行ってもらったのがピアノと出会ったきっかけ。


花音が生まれてすぐのことだった。


ピカピカ黒く輝くピアノが、ものすごくかっこよく見えた。


おじいちゃんにピアノの椅子に座らせてもらって、ピアノに手を置いた。


あのとき出したドの音を、今でも覚えてる。