音を奏でて~放課後の音楽室~

「怖い?」


「嫌われたくないよ」


「大丈夫、優音」


俯いていると、先生がそっと私の顔を上げる。


「優音が帰ってくる場所はあるから。だから、少しだけ頑張ろう」


「うん」


ポロポロと涙が流れる。


「俺もちゃんとピアノと向き合うよ。きっとそれが、親と向き合うことになるから」


「うん」


頬に伝う涙を、先生が拭う。


「先生は、帰ってくる場所ある?」


「あるよ。優音の隣」


「うん」


現実から、逃げてばかりじゃいけないんだ。


ちゃんと向き合わないと、先に進まない。