「ねえ、先生」


「ん?」


「聞いてる?」


「聞いてる」


あの日から毎週日曜日、私は先生の家に来るようになっていた。


先生のところに行って私はピアノ弾いて、先生はそれをソファーに背中を預けて聞いてる。


でも、本とかスコアを見ながらなんだけどね。


「さっき。間違えたでしょ?」


「えっ?」


「3小節目の2番目の音」


「うっ。先生、耳良過ぎです!」


「そう?」


こっちを向いてニヤッと笑った先生は、またスコアに目を戻した。


もう、ほんとに先生ってば耳いいんだから。


ほんのちょっと指が滑っただけなのに。