ふと壁に掛けられた時計を見ると、夜の7時。


「あっ」


立とうとする先生の腕を、私は思わず掴んでいた。


「帰りたくない」


小さく呟いた私の声に、先生がため息を落とす。


「優音」


先生が私と視線を合わせるようにしてカーペットに膝をつく。


「いい子だから」


「いい子はイヤって言ったのに」


そう言ったら先生は困ったように笑った。


「帰ったら一人だもん」


やっと一人にならない場所を見つけたのに、また一人にならないといけないの?


「ここにいたい?」


「うん」


「でも、さすがにいろいろ不味いだろ?」