音を奏でて~放課後の音楽室~

先生がギュッと私を抱きしめる。


親は、すごく優しい声で花音って呼ぶ。


笑顔で、抱きしめる。


だけど、私はそんな風に名前を呼んでもらったことがない。


抱きしめてもらったことがない。


「優音」


「もっと呼んで」


「優音、優音」


「もっと抱きしめて」


先生の腕に、力がこもる。


「これからは、俺が呼んであげる。優音って」


「うん」


「俺が抱きしめてあげる」


「うん」


頬に伝った涙を、先生がそっと拭ってくれる。