音を奏でて~放課後の音楽室~

大きなグランドピアノを前にして少し緊張した。


それでも思い切って音を出してみる。


「あっ、柔らかい」


部屋中に響く柔らかい音。


その音に導かれるように、私はたくさん曲を弾いた。


「ふう」


一気に曲を弾いたところで一息つく。


ふとリビングの方を見ると、内田先生がソファーに座り文庫本を読みながらカップに口をつけていた。


「何飲んでるんですか?」


「コーヒー。飲む?」


そっと声をかけると、短い返事が返ってきた。


「苦いですか?」


「なに?甘いのがいい?」


先生がこっちを向いて少し私をバカにしたような笑顔をする。


「あっ、今私のこと、子供っぽいって思ったでしょ?」