音を奏でて~放課後の音楽室~

「もう少しだけ待ってて。仕上げをしちゃいたいから」


「分かった。家上がってる」


「うん」


内田先生が玄関を出ると、みちる先生がドアを閉めた。


「なんか、仁と仲良くなったみたいね」


「仲良いのかな?」


みちる先生が私の隣に座る。


「あの子と優音ちゃんは似てるのね」


「うん。だから、気になっちゃうの」


みちる先生が私の頭をなでる。


「仁にはね、溢れるほどのピアノの才能があった。だからね、あの子の親の愛情は、いつの間にか仁のピアノだけに向いていった」


みちる先生の綺麗な手が、ピアノの上に乗る。


「仁は親の期待にちゃんと答えた。期待に答えたっていうより、仁はピアノが好きだったから自然にやってたって感じだけど。まあ、だから褒めてもらえて、愛してもらえてるって思ってたのね」


ポロンと室内にピアノの音が響く。


「ピアノを弾けなくなって、親は仁に興味がなくなった。そのときから仁はピアノを弾かなくなった。でもね、私は仁のピアノ大好きなの」