音を奏でて~放課後の音楽室~

それからもうひとつのドアを開けると、内田先生が姿を現した。


「あれ?仁がこっちに来るなんて珍しい。家開いてなかった?」


「いや。ちょっと彼女に用があって」


「優音ちゃん?」


みちる先生が私と内田先生の顔を見比べる。


「ピアノを弾かせてあげる約束してたんだ」


「ピアノって、あの雅子さんが弾いてた?」


「ああ」


この前、ピアノ教室が終わったあと、先生の家にあるピアノを弾かせてくれるって約束してくれた。


だから、迎えに来てくれたの。


「仁も、弾くのピアノ」


「分からない。ただ、あの家にまたピアノの音が響くのはいいかなって」


「そう」


「特に、彼女の音なら」


そう言って内田先生は、少しだけ微笑んだ。