「ううん。ただね、おじいちゃんもおばあちゃんもいなくて、もう私のピアノ真剣に聞いてくれる人いないなって」


「俺やみちるさんは?」


「でも、高校卒業したら先生とはお別れだし、みちる先生ともやっぱり高校卒業したら・・・」


多分高校卒業したら、みちる先生のピアノ教室は辞める。


「俺は、君のピアノを一生聞いてたい」


「ありがとう、先生」


そんなこと言ってくれるの、先生だけだよ。


「さっ、今日はもう帰ろう」


「はい」


ピアノのふたを閉めて、音楽室を出る。


「先生」


「ん?」


「ピアノ、弾きに行ってもいいですか?」


「うん。おいで」


「ありがとう。先生」