「先生」


「ん?」


「なに弾いて欲しい?」


「そうだな。シューベルト」


「はい」


ここは、土曜日の音楽室。


午前中は部活をやっていて、午後の今は先生と私の二人きり。


『みんな帰ったからおいで』ってメールを貰って、ここにやってきた。


メールアドレスは、この前教えてもらった。


曲を弾き終わると、先生がカタンと音を立てて席を立った。


「顔色、良くなったね」


私の隣に立った先生は、そっと私の頬に手を置いた。


「ちゃんとご飯食べてるし、薬もちゃんと飲み終わりましたよ」


「そう。よかった」


「もう。先生といると、自分がすごく子供になった気分になります」