「ほんとに帰らないと・・・」


「まあ、さすがにここに君を置いておく訳にはいけないからね」


確かに、ここは先生の家で、生徒の私が居ていい場所じゃない。


「でも、君が望むなら」


「私が望むなら?」


「いつでもここに来ていいよ。君の心が、ここで安らぐなら」


「ありがとう、先生」


本当なら、心の休まる場所は家なんだと思う。


でも私にとって家は、苦痛でしかない。


「送ってくよ」


「はい」


先生に手を持たれて、ソファーから立ち上がる。


「そういえば、荷物って・・・」


「ああ。田島さんが用意してくれたよ」


「葵が?」