「まあ、骨折と頭を打ってたくらいだったんだけどね。親もたまたま日本にいて、病院に来てくれて、俺が意識を取り戻してホッとしてた」
「うん」
「でもね、俺の指にいっぱいガラスが刺さってて。それが指の神経を壊して、もう前みたいにピアノは弾けないだろうって、医者が言った」
「そんな・・・」
先生が自分の指を見つめる。
「今でも覚えてるよ。その話を医者から聞いたとき、父親は、ああこいつはもうダメだなって言ったんだ。母親も、ここまでせっかく育てて来たのにって、ため息ついた」
「どうして?生きてたことでも嬉しいのに」
「結局は、親は俺を愛してたんじゃない。俺の指を、俺が弾くピアノを愛してたんだ。だから、ピアノを弾けなくなった俺は用無し」
先生のことなのに、胸が痛くなる。
先生も、親に愛されてなかったの?
「それから親は、俺に構わなくなった。ピアノを弾けなくなったから、高校も普通科に変えた」
「それからピアノは?」
「弾いてないよ」
先生は静かに、そう答えた。
「先生」
「うん」
「でもね、俺の指にいっぱいガラスが刺さってて。それが指の神経を壊して、もう前みたいにピアノは弾けないだろうって、医者が言った」
「そんな・・・」
先生が自分の指を見つめる。
「今でも覚えてるよ。その話を医者から聞いたとき、父親は、ああこいつはもうダメだなって言ったんだ。母親も、ここまでせっかく育てて来たのにって、ため息ついた」
「どうして?生きてたことでも嬉しいのに」
「結局は、親は俺を愛してたんじゃない。俺の指を、俺が弾くピアノを愛してたんだ。だから、ピアノを弾けなくなった俺は用無し」
先生のことなのに、胸が痛くなる。
先生も、親に愛されてなかったの?
「それから親は、俺に構わなくなった。ピアノを弾けなくなったから、高校も普通科に変えた」
「それからピアノは?」
「弾いてないよ」
先生は静かに、そう答えた。
「先生」

