音を奏でて~放課後の音楽室~

ピアノが置いてあるところ、ソファーが置いてあるリビングらしきところ、そのリビングの後ろにはキッチンがあって、全部フローリングの床でつながっていた。


家に帰りたくない。


そう先生に告げたら、ここに連れて来てくれた。


「ウーロン茶、飲める?」


「はい」


ガラスのグラスに入ったウーロン茶を受け取って、一口飲む。


「ただの教師が家賃を払っていけるような部屋じゃないだろ?」


先生が立ったままソファーの角に手をつき、ピアノを睨みつけるようにしてそう言った。


「内田晴彦、雅子って聞いたことある?」


「はい。世界でも有名な指揮者とピアニストの方ですよね。でも確か、飛行機の墜落事故で亡くなってる」


「そう。その二人は、俺の親だ」


「そうなんですか?」


始めて聞く、先生のこと。


「あそこのCD」


今度はCDの入った棚に目を向ける先生。