音を奏でて~放課後の音楽室~

「いい。お母さん、花音の病院に行ってくるからね」


「うん」


私を病院に連れて行ったあと、お母さんはバタバタと家を出て行った。


「私、お母さんに嫌われちゃったかな?」


手のかからないいい子だから、お母さんは私のこと好きでいてくれたのに。


熱出したから、お母さんに嫌われちゃったかもしれない。


そう思ったら涙が溢れてきて、止まらなくなってしまった。


「ごめんなさい、お母さん」


本当は、傍にいて欲しかった。


でもこれ以上嫌われたくなくて、言えなかった。


苦しくて、寂しくて、いっぱい泣いて。


眠って起きたときに、もしかしたらお母さんがいるんじゃないかって淡い期待を抱いて。


でも、お母さんはいなくて。


それが寂しくて、また泣いて。


その夜、まだ熱の残る身体でフラフラと下に下りて行ったら、お母さんとお父さんの話声が聞こえてきた。