音を奏でて~放課後の音楽室~

「いや。優音ちゃんは才能があるからね」


そう言って樹さんは、またグイっとビールを飲む。


「本場の音楽に触れて欲しい。まあ、大学を出てからでも遅くないけど、出来るだけ早くね。もう大学は決めた?」


「私、大学行くのやめたから」


「えっ?」


樹さんが、ゴホゴホとビールにむせる。


「ちょっといろいろあったから」


思わず俯いてしまう。


「ほら。もうこの話はいいから、食べましょ?」


そうだ。


私が暗い顔したら、みんなに迷惑がかかる。


「ねえ、樹さん。話の続き、してください」


グッと顔を上げて、樹さんに向かって笑う。


「そうだね。じゃあ・・・」


また樹さんの話を聞きながら、ご飯を食べ始めた。