音を奏でて~放課後の音楽室~

「コラ、樹!優音ちゃんを困らせないでよ」


キッチンからみちる先生が顔を出す。


「ロリコン」


みちる先生の後ろから、内田先生も姿を現した。


「ロリコンじゃないわ。たく、口悪いな仁は」


「ほら。ご飯にしましょう。優音ちゃん、おいで」


みちる先生に手を引かれて、ソファーから立ち上がる。


「ごめんね、優音ちゃん。ヘンなおじさんで」


「うんん。私好きだったよ、樹さんに抱っこしてもらえるの。お父さんに抱っこしてもらってるみたいで」


お父さんに抱っこしてもらった記憶が、あまりない。


だから、嬉しかったんだ。


小さいころ、樹さんが抱っこしてくれたこと。


「ほら~喜ばれてるだろ」


「はいはい。いいから食べましょ」