「3曲目のベートーベン」


「はい?」


3曲目に弾いた曲?


「2小節目の3番目の音、間違ってましたよ」


「えっ?」


「じゃあ、気をつけて帰ってください」


それだけ言うと、内田先生はスタスタと階段を下りて行った。


「うそっ・・・」


びっくりした。


確かにそこは、私も間違えたって思った。


指が滑って、隣の音を押してしまった。


でもそれに気づくなんて。


同じ空間に居たわけじゃない。


私が音楽室の中に居て、先生はドアをはさんで廊下に居たのに。


すごく、耳がいいんだ。