「今日ね、樹(いつき)が帰ってくるのよ」


「あっ旦那さん?じゃあ私、いない方がいいんじゃないの?」


「そんなことないよ~樹も優音ちゃんのこと大好きだし」


樹さんは、みちる先生の旦那さん。


海外から帰って来て私に会うと、いつも向こうのことを話してくれるの。


音楽のこと、向こうの生活のこと、とにかく樹さんの話を聞いてるのはすごく楽しい。


「はい。紅茶とケーキ」


リビングのソファーに座っていると、みちる先生が紅茶とケーキを運んで来てくれた。


「ありがとう」


煮詰めたリンゴがいっぱい詰まったアップルパイ。


いつもなら食べたくてしょうがないのに、今は一切食欲が沸かない。


どうしよう?


食べないと失礼だし、でも食べたら吐いてしまいそう。


「優音ちゃん、もしかしてアップルパイ嫌い?」


「あっ・・・」