「ごめんね、みちる先生」


「ううん。それはいいんだけど・・・」


ピアノの教室の日。


「優音ちゃんは、それでいいの?」


「うん。もう決めたの」


大学進学のためにピアノ指導をしてくれてたみちる先生。


せっかく指導してくれてたのに、私が就職することになったから、今まで指導してもらったことが全て無駄になっちゃった。


「でもピアノやめないから、また教えてくれる?」


「ええ。また一緒に、楽しくピアノ弾こうね」


「うん」


ピアノを弾いてるときだけは、何もかも忘れられる。


就職に決めたことも、家族のことも、眠ったままのおばあちゃんのことも。


「はい。今日はここまで」


「えーまだ30分しか弾いてないよ?」


せっかくノッテきたところだったのに。