「お母さん、これから病院行くけど、優音はどうする?」


教室を出た後、すぐにお母さんにそう聞かれる。


「ん?歩いて帰るよ」


「そう。分かったわ」


そのままお母さんは急ぎ足で階段を下りて行った。


そのまま帰る気になれない私は、音楽室に向かった。


「よかった。開いてる」


鍵が閉まってると思ったけどドアは開いていて、音楽室に入った私はピアノの椅子に座った。


「私、働けるかな?」


ちゃんと就職出来るかな?


持ってる資格といえば、英検と漢検だけだし。


出来るのは、音楽だけなのに。


「ねえ、私どうすればいいのかな?」


ピアノが答えてくれるはずないのに。


私はピアノのふたの上に突っ伏した。