先生の手が、今度は目元に伸びてくる。


「泣いたの?」


「えっ?」


「目が赤くなってる」


咄嗟に先生から顔をそむける。


「やめたくなくて泣いたんでしょ?」


「それでも、やめます」


「そっか」


先生が短く息を吐く。


「そこまで決心してるなら、もう何も言わないよ」


「ごめんなさい」


「謝ることじゃないよ。ただ、君の音が聴けなくなるのは寂しいけどね」


ポンポンと私の頭をなでる。


「迷惑かけてごめんなさい」


「謝らなくていい。何も悪くないよ、君は」