───………。

…どんなに拭ってもこぼれ落ちる涙。
もう拭うことさえどうでもよかった。

暗い部屋で布団をかぶって眠ろうとすると、
電車の窓から見えた夕貴とあの子の姿が頭のなかで何度もリプレイされる。

すると、暗闇を明るくするように携帯の着信が入った。
夕貴からだった。

一瞬ためらって…でも通話ボタンを押した。


「はい」

「あ…俺…だけど。」

夕貴もなんだかぎこちない…。
泣いてたことを悟られないように、明るく話しかける。

「どうしたの?」

「え…えっと…」

「あ、の…人のこと?」

「……」

「見ちゃった…電車から。2人でいるの…」

「ごめん。」

「…どうして謝るの…」

「………」

「………」