ラグナレク

ロックオンした敵の位置に向け、《ジャッジマン》は地を蹴った。メインカメラと同期されたヘルメットから、自機が風を斬り裂きながら進む音が聞こえる。
敵は急に突進を仕掛けてきた僕に驚きながら、ガトリング砲を無茶苦茶に振り乱す。当然、被弾することはない。




―――300―――200―――100―――。
目標との距離を、瞬時に詰めてゆく。そして僕は、あわや激突する、といった距離まで目標と肉薄したところで再び地を強く蹴り、宙に舞った。
僕は背に銃を格納すると同時に、もう片方の手で腰辺りに装備されている菱形のそれを取り外し、腕へと装着する。
くるくると回転しながら腕に取り付けられた物のボタンを、軽く突く。すると菱形の尖端である部分から、淡い藍色をした板状の光が伸びる。それはたちまち《ジャッジマン》の腕と同じ―――或いはそれ以上―――の長さにまでなり、形状はまるで刀身のように鋭利な雰囲気を帯びている。
粒子でかたちどられたブレードを一度だけ軽く振り、目標の背後を取る形で地面に着地する。
震動に気が付き、そして目標が振り向くや否や―――僕は背を見せた目標に向けて、再度猛然と突進を開始した。凄まじい砂埃を上げながら、《ジャッジマン》は光の如く翔け、身体を捩り―――。




―――腕を振り切った。
迷いの無い剣は、目標である《インプ》の体を薙ぎ払い、断った。
粒子により熔解された金属が、ばちばちと音を立てながら灼ける。

僕は動きが止まったのを確認してから、次の目標へと自機を走らせる。合格条件は既に満たしていたが、何故かしらたぎっている血流が戦いを終える事を望んではいないようだった。




僕は二つの立ち尽くした機体の間へと飛び込んだ。
こちらへは来ないだろう、と油断しきっていたのか、驚きを露にし、体は反応しきれていない。
《ジャッジマン》は両の腕に輝く光の刃を、地に水平に滑らせる。
真横からの剣撃に対応する術もなく、二機の《インプ》はその場に崩れ落ちた。