ラグナレク

記憶の同期とは便利なものだ、と他人事のように考えながら、ズームされた敵機を眺める。

機体に取り付けられた武器は―――どうやら、平らな頭(頭なのかどうかはやはりよく解らないが、メインカメラであることは確からしい)の上に申し訳程度に取り付けられた、小型のガトリング砲二つのみらしい。いかにも練習用の相手、としたその姿を見て、僕の中に憐れみともとれる感情が湧き出た。僕は自機―――《ジャッジマン》の右腕を動かし、その手に握られた中型の突撃型ライフルを、自然に伸ばされた腕の直線上へと運ぶ。








『ではこれから、チュートリアルを開始します。制限時間は十分。その間に敵目標―――《インプ》を一機以上撃墜してください。その条件を満たせば、晴れてチュートリアルクリアーとなります』








一機以上の撃墜、か………。

何とかなりそうだ、とは思うが、今の話に一つだけ疑問が残った。僕はその不思議を解消すべく、小さく声をあげる。








「―――ちょっと待って。なら、制限時間内に一機も撃墜出来なかったのなら、どうするんですか?それは、説明されていないようですが………」








僕は、怖ず怖ずそう尋ねた。
―――しかし、質問してから数十秒の間、回答どころか一つの反応もなかった。僕は訝しげな表情をし、首を傾げる。どうやら決められた事を話すのは得意でも、突然の質問にすぐさま対応出来る程には電子回路が発達していないらしい。
暫くの間決め込んでいた静寂を打ち破り、定まった機械音声は回答を始める。