既に逃げ場はない。

呼吸を乱す隼人の前に、私はゆっくりと姿を現す。

「随分と手こずらせてくれたな、MHⅡ」

「……」

私の言葉に、隼人は無言のまま。

どこまでも反抗的な態度だ。

仮にこのまま連れ帰って脳を再調整した所で、また自我を取り戻し、私に、そして機関に牙を剥くのだろう。

こういう手合いは組織破綻の原因となる。

惜しい人材ではあるが、ここで見限るのが得策だろう。

「既に人間ですらなくなったガラクタだが…せめて最期は人間らしく遺言を聞いてやろう…何か言い残す事はあるか?MHⅡ」

「…ああ」

強い意志を秘めた…傀儡の改造人間とは全く違う、自我に目覚めた『人間』の瞳で、隼人は私に告げた。