蝉時雨を追いかけて

 やっぱりありえない。二人ともボケだから、話が成立してないじゃないか。

考えにふけりながら、ぼんやりと見つめていると、ふいにおかっぱがこちらを見た。

おれの存在に気付いたのか、一瞬目を見開くと、立ち上がって歩き出した。あの方向はトイレだろうか。


 二分後、おれの携帯におかっぱからメールがきた。


『拓海ったら、オレのことをストーカーしてたのね。ヤダわ、恥ずかしい。

そんなにオレのことが好きなら、始めっから言ってちょうだいよ。

しかたないわね。あとで拓海の家に行ってあげるわ。他の人には秘密だからね』


 おれは殺意をおぼえたが必死に堪え、いったん家に帰ることにした。

ここにいてもしょうがない。あいつらが話しているところを見たところで、謎が深まるだけだ。

おかっぱがおれの家にくるというのなら、それを待とう。そこで、すべてを明らかにしてやる。