蝉時雨を追いかけて

 

***


「拓海、なかなかカッコよかったじゃないの。それでこそオレの拓海よ」


 部活終了後、部室で着替え中のおれにおかっぱが声をかけてきた。

おかっぱはなぜかスーツに着替えていた。


「何度も言うようだが、おれは断じておまえのおれではない。それと、なんでスーツなんか着てるんだ?」


「ななななんでもないわよ。そそそれと、今日の夜練、お、お休みさせてもらえないかしら」


「なんで?」


「ななななんでもないわよ。それじゃあね。あはは、あはは」


 おかっぱが気持ち悪い笑みを浮かべながら、千鳥足で去っていく。

怪しいというか、もはやわざとじゃないだろうか。

おれは急いで着替え、おかっぱを尾行することにした。間違ってもストーカーではない。