蝉時雨を追いかけて

 乾いた振動が、空気を伝った。

北村麗華が、田端の頬を思いっきり平手で叩いていた。

さらに今度は拳を握って殴ろうとするところを、慌てて制した。


「北村さん、落ち着いて」


 北村麗華は立ち上がって田端と荻窪を睨みつけている。

暗いカマキリなのにしゃべりはチャラい田端は、顔を歪めて舌打ちした。


「なんだよ、調子ノリやがって。レイカは俺っちたちの側に来たと思ったのによ、結局双子の味方かよ。ふざけんな! なあ、荻窪」


「…………………………うん」


「もうイイわ。なんか冷めちった。俺っち、この部活辞めるわ。つまんねーし。なあ、荻窪も辞めるか?」


「…………………………うん」


 ふたりが立ち上がって、部室に向かって歩いていく。ギャラリーはふたりが通れるように道をあけていた。