蝉時雨を追いかけて

 えー、どうやら聞いていてもしょうがなさそうだ。北村麗華はあからさまに嫌な顔をしている。

おかっぱを裸足で踏みつけたとしても、あんな顔にはならないと思う。……いや、なるかもしれないな。

しかたなくおれは、北村麗華を見るためにやってきたギャラリー(テニス部部員)を掻き分け、田端&荻窪の前に立った。

ベンチに座っているふたりは、立ち上がろうともせず、下からおれを睨みつけている。


「なんすか、ダメな先輩。才能ないのに、まだこの部にいたんすか? さっさと辞めればいいんじゃね? なあ、荻窪」


「…………………………うん」


「つーか、なんでそこに突っ立ってんすか。あ、もしかして、俺っちとレイカちゃんが話すとこ研究しにきたとか? はっはっは、チョーウケる。たしかにそれくらいしなきゃダメそう。なあ、荻窪」


「…………………………うん」


「ホント、出来る弟を持つと大変っすねー。ま、つっても、弟もダメ人間だったみたいっすけどね。愛しのレイカちゃんにフラれちゃってるし……」