蝉時雨を追いかけて

「拓海、またあいつらよ」


 おかっぱが体から発酵した臭いを撒き散らしながら、おれの横に立つ。

おれたちは、ちょうどランニングを終えたところだった。

ランニング終了後、いままでならベンチでは拓馬と北村麗華がしゃべっていたのだが、拓馬がいなくなってからは違う。

拓馬が学校を休むようになってから、拓馬と北村麗華が別れたという噂が流れ始め、いまでは多くの男子部員が北村麗華に群がるようになったのだ。

特にひどいのは田端荻窪コンビだ。

あいつらは北村麗華にべったりと張り付き、四六時中声をかけて離れようとしない。

おかっぱがあいつらと言ったのも、田端と荻窪を指しているのだ。


「ああ、もうあいつらはしかたないだろう」


「ちょっと、あんたがそんなこと言ってどうするのよ。今マネージャーを守れるのは、あんたしかいないのよ」


 おかっぱはいつにもまして興奮している。よほどあのふたりが嫌いらしい。