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「拓馬くん、どうかしたんですか?」
全速力で玄関へ向かい、扉を開けた瞬間、北村麗華の第一声がそれだった。
「拓馬くん、学校を休んでいたみたいで、電話をしてもメールを送っても返事がないんです」
「ああ、そうか」
やはり拓馬は、本気で北村麗華に近づかないつもりなんだ。
たしかにおれにとってはチャンスなのかもしれないが、北村麗華の悲しそうな顔を見るのはつらい。
拓馬と北村麗華がまた元に戻れば、彼女は笑顔になってくれるのだろう。
だがおれは、それでいいのだろうか。
「ねえ、拓海さん。拓馬くんになにかあったんですか?」
彼女にとって、一番は拓馬。それはきっと変わらない。
北村麗華が浮気だなんて、ありえない話だ。おれは……。



