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あの試合が原因だったのか、次の日拓馬は学校を休んだ。
今まで一度も休んだことはなかったのだ。試合でのショックがよほど大きかったのだろう。
おれに負けたのがくやしかったのか、北村麗華とおれが浮気しているのが嫌だったのか、それとも他になにか理由があったのか。
おれは窓を開け空を見上げた。5月の夜空は雲に覆われて、パラパラと雨が降っていた。
もう梅雨入りが近いのかも知れない。
右側から、窓を開ける音がした。拓馬の部屋だ。
そちらを見ると、顔を覗かせた拓馬と目が合った。
口になにか、白いものをくわえている。
拓馬は慌てて顔を引っ込め、窓を閉めた。
顔があった位置には、白い煙が雨に混じり、揺れていた。
発生元を失った煙は、ゆらりと消えていく。
タバコだ。
拓馬は学校を休んで、タバコに手を出していた。
「拓海さん」
突然、下から声をかけられた。部屋のすぐ下には玄関がある。
北村麗華が、そこに立っていた。



