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「拓海、話があるのだけれど」
貰った写真を机の上で眺めていると、拓馬がノックもせず部屋に入ってきた。
おれは慌てて写真を机の引き出しにしまう。
「ああ、なんだ?」
「拓海、今何か隠さなかった?」
「いや、なにも」
「それなら見せておくれよ」
拓馬が強引におれの制止を振り払って引き出しを開け、写真を手に取り、それをじっと見つめた。
「これはどういうことだい?」
「見ての通りだよ」
「麗華が拓海と浮気をしているということかい?」
「だったらなにか?」
おれは最低だ。弁解しようと思えばいくらでもできるのに、それを言わない。
勝手に勘違いしてればいいと思っている自分がいる。
「わかった。それなら、勝負をしないかい?」
「勝負?」
「そう、テニスで勝負をしよう。今度はシングルスだ。負けた方は二度と麗華に近づかないというルールで。明日の放課後、テニスコートへきておくれよ」
拓馬は写真を机の上に置き、返事を聞かずに部屋から出ていった。
写真の中で北村麗華が、おれを睨み付けているような気がした。



