蝉時雨を追いかけて

 おかっぱは本当にブサイクなのだ。例えるなら、大失敗した福笑いみたいな。

おかっぱ頭なのもウケ狙いとは言っていたけど、おれには余計キモさを増大させただけとしか思えない。

その上、なぜか微妙にオカマ口調なのだ。


「イイのよ、事実なんだから。それに、男のブサイクと女のブサイクは違うのよ」


 訳のわからないことを言って、おかっぱは立ち止まった。

学校周りで一番急な坂にさしかかろうとするところだった。


「おかっぱ、どうかしたのか?」


「この坂はちょいと気合入れないと上れないのよ」


「ああ、そうか」


 おれは適当に返事をして、走り出す。そこに、おかっぱの声が飛んできた。


「それより拓海、あんたさっそく、あのマネージャーにホレちまったみたいね」


 ちょうど坂を上り始めるところでつんのめって、ずっこけるような形になった。

おれは苦笑いしながら、おかっぱの顔を見る。

おかっぱは、にやにやしながらおれの様子をうかがっていた。