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扉を開けると、そこには本当に北村麗華がいた。
いつもと違う私服姿は新鮮で、いつも以上に輝いて見える。
「あ、拓海さん、こんにちは。拓馬くん、いますか?」
「いや、いま出かけてるみたいだけど」
「そうですか。一緒に勉強しようって言われたんですけど」
北村麗華が唇を突き出して、不満を現した。普段は大人びた彼女がふと見せた子供っぽいしぐさ。
それがまた魅力的で、おれは思わず目をそらした。
どうしておれは、こんなにも緊張しているのだろう。
「そ、それは、拓馬に言われた?」
「いえ、岡田さんに聞きました」
「ああ、おかっぱか」
なるほど、おかっぱは北村麗華をだましたのか。だから家にくることも知っていた。
だが、なんのためにそんなことを?
「アラ、マネージャーじゃない」



