蝉時雨を追いかけて

 さらりと、とんでもない言葉が聞こえてきた気がする。


「ああ、そうだな。それで、北村麗華がくるというのはどういう意味だ?」


「そのままの意味よ。そろそろかしら」


 ありえない。

今日は拓馬もどこかへ出かけているようだし、拓馬のいない家にわざわざ北村麗華がくるはずがない。


「なんで北村麗華が拓馬もいないのにくるんだよ」


「イイのよ、細かいことは。あら、きたみたいね」


 家の呼び鈴が鳴った。ありえない話だが、おかっぱの言っていることが本当だったのかもしれない。


「頑張ってきなさいよ」


 おかっぱが両目ウインク、別名ただのまばたきをしてきた。しかたなくおれは、玄関へ向かった。