おかっぱはどうでもよさそうに頭を掻いてベッドの上にふけを落としてから、テニスの理論が書かれた本をゴミ箱に向かって放り投げた。


「そんなことより拓海、あんたマネージャーとはどうなのよ」


「なにもないに決まってるだろ。北村麗華は拓馬と付き合ってるんだぞ」


 おかっぱはしつこい。なにもないことくらいわかっているくせに、わざとこういうことを聞く。


「だからって諦めるの?」


「あたりまえだろ」


「でも好きなのよね? 付き合いたいのよね? それなら諦めちゃダメよ。ホラ、安西先生も言ってたじゃない、諦めたらそこで見合い終了って」


「試合終了だろう。なんであきらめたら、してもいないお見合いが終わるんだよ」


「同じようなものじゃない。イイのよ、細かいことは。大事なのはこれからここにマネージャーがくるってことでしょ」