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「拓海、入るよ」
拓馬がノックをして、おれの部屋に入ってきた。
めずらしく、むらさき色のTシャツに、むらさき色のジーパン(?)という普通の服装だ。
「ああ、なにか用か?」
拓馬は勝手におれのベッドへダイブし、枕に顔をこすりつけた後、ベッドの上に座りなおした。
……新手の嫌がらせだろうか。
「さっきさ、先生にライバル宣言されたよ。拓海は絶対おまえに勝つんだっ! ってさ」
「ああ、そうか。拓馬もゲジと話すことがあるんだな」
「そりゃそうさ。部長が顧問と話をするのは当然のことだろう? ところで拓海、そろそろ家を出る時間ではないのか?」
時計を見ると、夜の九時だった。たしかに、いつも家を出る時間だ。だが。
「なんで知ってるんだ?」
「中学くらいのときから、毎日9時になると走っていたのだろう? 知っていたよ。僕に勝つためなのかな。ということは、今は岡田と練習でもしているというところだろうか」



