蝉時雨を追いかけて

「声ちっさ! ちょっと監督ぅー、俺っち荻窪と組むの嫌なんすけどー」


 ゲジがようやく手鏡を見つめるのをやめ、ポケットにしまった。


「おまえらほど相性のいいコンビはっ、他にいないっ! とにかくっ、今日からおまえら二組はっ、ダブルス専門職としてっ、ダブルスに特化した練習を行うっ!」


「マジっすかー。あれ、二組ってことは先輩たちもっすかぁ? 俺っちたちが組まされるってのは聞いてたんすけど、もう一組いるなんて知らなかったんすけどー。なあ、荻窪」


「…………………………うん」


 暗いカマキリなのにしゃべりはチャラい田端がおれの顔を見た。


「あれ? 先輩ってたしか、部長の双子の兄みたいなやつなんすよね。大変っすよねー、弟はあんな上手いのに、兄はヘタクソで」


「なんだと?」


「なんすか? ヘタクソってのは事実でしょ? なあ荻窪」


「…………………………うん」


「はっはー、なんだよ、俺っちたち意外と息合ってんじゃん」


「…………………………うん」


 おかっぱが田端と荻窪に殴りかかろうとしていたが、おれはそれを制した。